日本人のための朝鮮半島の歴史 (KAWADE夢文庫)

韓流ドラマなどをみると、半島の人々が周辺国の盛衰に影響されてきたのだと感じたことはある。この本は、司馬遷の紀伝体のように、歴史流れを簡略化して説明しているので非常に分かりやすかった。韓流ドラマにあるような、裏切りや謀略のような話は割愛しているので、ドロドロした裏社会も姿を期待するとものたりない。最近気になっていたことがあった。韓国は独立国なのに、なぜ、政権トップがわざわざ自主独立や民族意識を強調するのかということだ。わざわざ主張するかというと？、それが当たり前ではないからかも、と思っていた。日本人としては、当たり前すぎて悩むこともないことだが、民族をまとめようと意図したら、民族の定義が何かを明確にする必要がある。歴史から知ったのは、血流が一つではない。つまり複数民族の集合体だということだ。複数民族がまとまるには、ユダヤ教のように宗教でまとめるか、もしくは誰もが認める格付けで位置づけを明確にする手がある。歴代の王家が儒教、特に格付けにこだわる朱子学を尊重した理由が忖度される。漢民族が中国を支配しているときは、儒教的な宗主国の弟分としてその地位が確保された。しかし、儒教民族とはいえない元や清が中国を支配しているときは、苦肉の策として、儒教を守る国として小中華と自称した意味が分かる。江戸幕府が儒教を大事にしたのは、国内の主従関係を固定化するためだったが、韓国の場合は、王家の格付けを確定するだけでなく民族としてのアイデンティティなのかもしれないと感じた。その後、列強の植民地侵略に対して、儒教民族として戦ったが負けてしまい、その価値観を失った。民族としてまとまる一つの手立てが、共産主義をベースとする新しい格付けの中で地位を確立することだった。これを進めると、極東でソ連中国の弟分としての地位を確立できる。かの民族の立場で統一を願ったとしたら、共産主義を信奉し、その中での極東での冊封をうけることが、民族の定義だと考えてもおかしくはない。ところが、たのみの中国は実質資本主義となり、ソ連は資本主義もしくは民族主義となり共産主義を放棄した。民族の定義は、歴史的な被害者としての共通の感情をもつことしか残っていないのか？「恨（ハン）」の裏側に流れるものが、垣間見たように感じた。