絵具の事典

例えばあなたが画材店に行ったとして、油絵を描きたいと考えるとします。画材店にはそれぞれのメーカーの画材のパンフがたくさん置いてあります。それだけひと通り眺めるだけでもそこそこ詳しいと言ったレベルにはなれます。ホルベインの場合テンペラ油彩の古典技法中心にピックアップしたパンフとかもあったし。で当本なんですが、名の通り絵具の解説なんですが、まぁ尋常じゃないくらい詳しいです。硫黄系と鉛系の絵具の混色はダメとか、チタニウムホワイトはルチル型が大半だとか、テルベルトは古来から肌色の補色として下地に用いられる色だったが油彩の場合下地にはオキサイドオブクロミウムがいいだとか、フタロシアニン・キナクリドンの登場で20世紀の絵具は変わったとか、カドミウムレッドはバーミリオンの代替として登場し顔料自体の毒性はあるが画面を活気づける鮮烈な赤色でファンが多いだとか、バーミリオンは黒変するため古来からカーマインをグレースし、画面の保護になる上とても深い赤色が表現できるだとか、オキサイドオブクロニウム(酸化クロム)が水和するとビリジャン(水和水酸化クロム)になって透明度が増し、ビリジャンフューは一方でフタロシアニンを使用していてオリジナルのビリジャンより彩度は高い、みたいなカラーチャートからは伺えない原料的な側面からアプローチできます。画用液などについてもひと通りの記述があります。ホルベイン工業の本であるからして、ホルベイン絵具についてしか書かれてないというレビューが有りますが、クサカベだろうが、マツダだろうが、少なくとも同じ製品名の絵具であるのに全く違う処方をしている場合というのはレアな場合(たとえばコバルトバイオレットライトはかつて砒酸コバルトを使用していたが毒性のために代替顔料を使うようになったメーカーとか)なので、そういう部分だけをハイライトしてしまうのはどうかと。